BISHOPスコアは産婦人科の診察になじみのない国家試験受験生にとっては最も覚えるのが難しいところではないかと思います。
今回は苦手な人が多いBISHOPスコアについて徹底的に解説していきます。
BISHOPスコアとは
まずBISHOPスコアの復習です。
BISHOPスコアとは頸管がどのくらい熟化しているかを点数化したものです。
1964年にEdward Bishop博士が陣痛誘発・促進した場合の成功率を予測するために提案されました。
ところで熟化についてちゃんと説明できますか?
まずは頸管が熟化について考えてみます。
頸管熟化
ヒトは直立二足歩行をしているため子宮の出口は下を向いています。
つまり重力で胎児は下(子宮口)から出やすい構造になっています。
そのため普段は子宮の出口である子宮頸管は、分娩までは胎児が出てこないように硬くしっかりと閉まっています。
しかし、妊娠満期になると詳細な仕組みは分かっていませんが頸管が柔らかくなってきます。
すると、重力で胎児の頭がだんだんと下がってきます。
さらに陣痛が始まるとどんどんと頭が下がってきます。
この頸管が柔らかくなって児頭が下がってくる経過を頸管熟化といいます。
この頸管が熟化する過程をいろいろな角度から評価して、どのくらい分娩の準備ができているのかを点数化したものがBISHOPスコアなのです。
BISHOPスコアの評価項目
少しBISHOPスコアの評価項目を見てみましょう。
頸管熟化の過程は、
①頸管が柔らかくなって、
重力で②児頭の位置が低くなることで
③子宮口が開いてくる
という順番で進んできます。
これは感覚的に分かりやすいのではないかなと思います。
評価項目でいうと、①子宮頸管の硬さ、②児頭の位置、そして③子宮頸管の開大度です。
そして、あと2つ評価項目があります。
④展退度と⑤子宮口の位置です。
展退度とは言い換えると頸管長、つまり頸管の長さのことです。
頸管長は図のように児頭が下降してくると頸管が引き伸ばされて薄くなっていきます。
もともとの頸管の長さは人によって異なるので、「%」で示されます。
最後に子宮口の位置です。
後から中、前と変化してきます。
どうして子宮口の位置が変化するかというと産道が曲線を描いているからです。
よくある女性の解剖の図を見てみてください。
子宮から膣口への通り道は曲線を描いています。
そのため児頭が高い頃は産道の向きが母体から見て後ろを向いていますが、児頭が下降するにつれて前の方を向いてくるのです。
BISHOPスコア どうして13点満点?
さてBISHOPスコアは13点満点です。
どうしてこんな中途半端な点数なのでしょうか?
これは経産婦と未産婦で所見が異なるからです。
一度お産すると頸管が初産婦よりも柔らかくなっています。
そのため、子宮口開大度と展退度(頸管の長さ)と児頭の位置は、経産婦では未産婦よりも早く熟化しやすいです。
おおよそ初産婦よりも経産婦ではBISHOPスコアでいうと各項目1点分早く熟化すると考えてみるといいでしょう。
そのため、経産婦のために3点の項目が余分に付け加えられました。
ただし子宮口の向き(前・中・後)と硬さ(硬・中・柔)は前や柔以上の項目がないため3段階(0点、1点、2点)しか評価できないため、3点がありません。
そのため13点という中途半端な点数となっています。
初産婦では子宮口開大度0cmから熟化がスタートしていきますが、経産婦ではお産しているため頸管がゆるく既に1cm開大、30%展退の状態からスタートするようなイメージでとらえると分かりやすいかもしれません。
BIHOPスコアの覚え方
ここが一番のヤマでしょう。
本当に覚えにくいです。
その理由は評価項目である開大度、展退度、そして児頭の位置に幅があるからではないでしょうか?
覚え方は検索するとたくさんあるので自分にあった方法で覚えるといいかと思いますが、
ここでは2点の項目を覚えることをオススメします。
子宮頸管の硬さは「軟」(マシュマロ様とも表現されます)
開大度は「3cm」(指2−3本分)
展退度は「50%を超える」(60-70%)
頸管の位置は「前」
児頭の位置は「(-1〜)0」
です。
BISHOPスコアの使い方
さてBISHOPスコアは頸管の熟化をいろいろな角度から評価していることを見てきました。
子宮口の硬度、開大度、展退度、位置そして児頭の位置はおおよそ比例関係にあるといっていいでしょう。
そのため子宮口の開大度や児頭の位置を伝えればどの程度分娩が進行しているのかが予想できます。
実際に、助産師さんが記載するフリードマン曲線は子宮口の開大度と児頭の位置しか記載しません。
その他の項目は補助的に記載します。
それでは5項目も評価するBISHOPスコアはいつ使用するのでしょうか?
それは陣痛誘発や促進の時に使用します。
オキシトシンで分娩誘発・促進した場合にどれくらいの確率で成功するのかを予想します。
8点以上で分娩誘発がほぼ成功すると言われています。
4点以下では頸管はまだ十分に熟化していない、つまりオキシトシンで分娩誘発しても経膣分娩に至る可能性は低いと判断します。
☞ちょっと臨床
施設などによっても異なりますが、頸管が熟化していなければ、熟化を促すプロスタグランジンE2製剤(内服)を使用し、熟化していれば、陣痛を促進するオキシトシン(アトニン®️点滴)を使用します。
その5点から7点であれば、熟化も促し弱い陣痛促進作用のあるプロスタグランジンF2α(点滴)を使用することが多いのです。
最近では経膣的に頸管の熟化を促すプロスタグランジンE2製剤(プロウペス®️)も使用できるようになりました。
国家試験ではBISHOPスコアが一人歩きしてしまっていますが、特に重要なときは分娩というよりは誘発・促進のときです。
フリードマン曲線
みなさん、フリードマン曲線って覚えていますか?
分娩の進行具合を児頭の位置と子宮口の開大度でグラフ化したものです。
BISHOPスコアを学んだら次にフリードマン曲線と絡めて覚えるといいでしょう。
フリードマン曲線で大切なのは直線状に分娩が進行するのではなく、シグモイド曲線を描くように分娩が進行するということです。
つまり分娩はあるところから急に進行します。
急速に進行する前を潜伏期、急に進行して子宮口が全開大するまでを加速期といいます。
注目してほしいのは潜伏期から加速期に移行するタイミングです。
このタイミングこそがBISHOPスコアで2点の項目のときです。
具体的には、子宮口が3cm以上、児頭の位置がSp -1から0のときです。
これはちょうど頸管が熟化したタイミングとほぼ一致します。
つまり熟化すると急激に分娩が進行するようになります。
ではどうして分娩が急速に進行するのでしょうか?
それは産道が曲線を描いていることと関係します。
頸管が熟化するころにはちょうど胎児への娩出力の向きと産道の向きが直線状の一致します。
つまり、抵抗が少なくなります。
そのため陣痛が効率よく胎児に加わり分娩が進むのです。
いかがでしたでしょうか?
BISHOPスコアについて少しは理解の助けになったでしょうか?
今回は以上です。