胎児の発生と進化のお話

胎児の運動機能の獲得時期(妊娠週数)の問題は一見、暗記をしなければならないように見えます。

 

しかし、脊椎動物の進化と絡めて考えてみるととても面白く見えてくる分野でもあります。

 

今回は胎児の運動機能の獲得について進化を絡めて見ていくことにしましょう。

 

実際の進化とは少し異なるところがありますが、細かいところは気にせずについてきてください。

 

諸説ありますが一番わかりやすいのが、ウニのような生物から魚類、両生類、爬虫類、そして哺乳類へと進化したという流れではないでしょうか。

まずは妊娠週数と進化を結びつけて見てみることにしましょう。

 

6週まで 

胎嚢はウニだ!

受精卵が子宮内膜に着床すると妊娠5週ごろから子宮内に丸い袋が見えてきます。

これを胎嚢(GS)と言います。

このころは拡散によって栄養は広がってきます。

そのため胎嚢の大きさを調べることで胎児の成長を確認します。

 

7週から11週 

魚に進化

心臓・血管系、神経-筋骨格系ができてきます

胎嚢が成長すると拡散だけでは全体に栄養が行き届かなくなってしまいます。

そのため血管を作りました。

そして血管に栄養や酸素を含んだ血液を流すためにはポンプが必要となります。

それが心臓です。

つまり胎児心拍が見えてくるようになります。

このころはちょうど魚類に相当します。

ちなみに魚は前後に成長します。

これは前後に血管が伸びているためです。

つまり頭から殿部(おしり)までの大きさである頭殿長(CRL)が成長の指標となります。

言い換えると頭殿長を測定する7週前後になれば胎児心拍を見ることができます。

 

運動機能

7週ごろには未熟ですが基本的な胎児の身体が出来上がってきます。

血管系だけではなく、筋肉や神経も作られます。

まだ動かせるほどではありませんが、神経と筋肉が協調して筋肉に力が入るようになります。

これが筋緊張です。

 

8週ごろ 

魚は水中で生活をします。

水中では体をくねらせて泳ぎます。

つまり体をくねらせるような体幹の動きが出現します。

また魚は水中を泳ぐため、そのときに生じる水の流れからエラ呼吸で酸素を取り入れたり餌を食べたりします。

つまり、まだ嚥下(飲み込み)や呼吸をする必要がないため、嚥下運動や呼吸運動は見られません。

 

12週から21週 

両生類から爬虫類、そして哺乳類へ。

胎児循環の完成、嚥下・呼吸機能の獲得

12週ごろはちょうど両生類に相当します。

胎児の成長に伴い血管もどんどん複雑に進化して、胎児循環が出来上がります。

胎児循環とは酸素化された血液が卵円孔を通して頭部に優先的に送り届ける仕組みのことです。

だから頭がどんどん大きくなっていくので頭の大きさである大横径(BPD)を計測することが、成長の指標となります。

運動機能

両生類は主に水辺で生活しますが、何かあったらすぐに水中に逃げないといけません。

どのように逃げるかというと、手足を使って水中へ逃げます。

つまり、四肢の運動がはっきりと見られるようになります。

さらに水辺で生活するようになるため泳ぐ必要がなくなります。

そのため餌を自分で飲み込む必要があります。

つまり嚥下運動が出現します。

(嚥下運動の出現は12週ごろですが、超音波検査で確認できるくらいはっきりとしてくるのは16週ごろと言われています。)

 

鰓弓と嚥下

みなさん鰓弓って覚えているでしょうか?

鰓弓とは魚のエラです。

魚は泳ぐことでエサとなるプランクトンなどを含んだ水がエラに入って来るため嚥下の必要はありません。

しかし、陸上に上がるということは泳ぐことができなくなるため嚥下の必要が生じます。

発生でも勉強したかと思いますが、エラが進化すると喉の周りの筋肉となります。

つまり嚥下のための筋肉です。

両生類にはもうエラはないですよね。

つまり嚥下をすることができるのです。

両生類への進化の頃はちょうど12週ごろに一致しますので、12週頃には嚥下ができると考えるとよいでしょう。

 

 

ちなみに、まだこのころは主に皮膚呼吸で生活するため呼吸運動の観察は極めて困難です。

☞ちょっとbreak1

教科書によっては呼吸様運動が観察されるのは12週ごろであると記載されています。

両生類は皮膚呼吸が主ですが、肺呼吸もし始める時期ではあるためあながち間違ってはいません。

しかし、ほとんどが皮膚呼吸に依存しているため肺呼吸を示す呼吸様運動はなかなか観察できないのが実際です。

 

16週ごろ 

16週ごろはちょうど爬虫類に相当します。

この頃になると陸上で生活をするようになるため、肺呼吸をしなければなりません。

つまり呼吸様運動が確認できるようになります。

(呼吸運動が出現するのは16週ごろですが、超音波検査ではっきりとするのは20週ごろといわれています。)

 

また陸上生活をしないといけないため、体内の水分が蒸発しないように皮膚もしっかりとしてきます。

つまり爬虫類は両生類と異なり、陸上生活をしなければならないため身体の水分の消費を節約する必要があります。

そこで作られた仕組みがおしっこです。

そして、このおっしこが羊水となります。

 

20週ごろ 哺乳類

哺乳類は変温動物である爬虫類と違って体温を維持する恒温動物です。

つまり体温を保つために全身を覆う産毛がしっかりと生えてくるようになります。

 

24週前後

交感神経系が発達し一過性頻脈がみられるようになります。

ところで自律神経の神経の進化には、

いろいろな説がありますが、僕はこんな風に覚えています。

両生類のころは天敵が現れると死んだふりをします。

これはちょうど迷走神経(副交感神経)反射して気絶しているのと同じ状態です。

その後、哺乳類となると恒温動物で暖かいため死んだふりをしていても天敵に気づかれてしまいます。

そこで天敵から逃げようとします。

これが交感神経の始まりとも言われています。

☞ちょっと休憩

ところで1分間あたりのヒトの呼吸回数と波の打ち寄せる回数は同じと言われています。

おそらくかつてのご先祖たちは主に波打ち際で過ごしていたため、波が引いたタイミングで呼吸をしていたと考えられます。

このころの呼吸するタミングが今でも受け継がれていると考えると、人類は海から来たという説に魅力がでてきませんか?

 

国家試験の問題を見てみよう

ところで、かつて国家試験でこんな問題が出てきました(103B-36)。

今ならすぐに解答できるのではないかと思います。

 

第103回医師国家試験B-36

超音波画像下に観察が可能な胎児の運動・機能と時期の組み合わせで誤っているのはどれか。

a 心拍動 妊娠10週

b 呼吸様運動 妊娠12週

c 四肢運動 妊娠15週

d 排尿行動 妊娠20種

e 嚥下運動 妊娠30週

 

正解はbです。

 

どうしても胎児の発生・発育は暗記になりがちですが、このように進化を結びつけて考えてみると新たな発見があるかもしれません。

今日は以上です。

 

まとめ

神経・筋骨格系(4週ごとに変化してきます。)

筋緊張(7週)→身幹の運動(8週)→四肢運動(12週)→呼吸様運動(16週)→胎児一過性頻脈の出現(24週)

この分野は解説書によって運動機能の獲得週数に多少の前後は見られますが、運動機能の獲得する順番は上の通りです。

 

実はこの順番はちょうどBPSの評価項目と一致します。

実は胎児が低酸素状態となると運動機能の獲得とは逆の順番で、運動機能が見られなくなります。

つまり後に獲得する運動機能ほど複雑で酸素をより消費すると考えてもいいでしょう。

筋緊張まで消失してしまうということは、かなり低酸素状態、つまり胎児が危険な状態であることを示しています。

 

次回は、BPSについて詳しく見ていくことにしましょう。

 

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