以前、正常分娩における第1回旋から第4回旋までを見てきました。
前方後頭位が経膣分娩における正常な回旋です。
はじめに この分娩講座は、50年以上もの間、述べ2万人以上のお産に関わられた「お産の神様」とも呼ばれる先生(70歳台後半の現役産婦人科医)からご指導いただいたことを書かせていただきました。 さて国家試験の勉強などをしていてなかなかイ[…]
前方後頭位の他にも前方前頭位、後方後頭位、そして後方前頭位があります。
さて、これらの胎位・胎勢は経膣分娩は可能でしょうか?
今回はその疑問に答えます。
第1回旋と第2回旋
第1回旋は首の上下の運動です。
ここで先進部が決まります。
先進部が決まるということは進む方向が決まります。
首を下方向への頷くような運動、つまり屈位では後頭部が先進方向になり、胎児から見て後ろ方向に進みます。
それに対して、首を上に上げて見上げるような運動、つまり反屈位では前頭部が先進方向となり、胎児から見て前方向に進むようになります。
ちなみに産道の出口は母から見て前側を向いています。
そのため先進部の進む方向は出口のある方向を向かないと分娩はできません。
もともと胎児は母から見て左右どちらかを向いています。
そのため、産道の出口の方向に児頭の先進部を向けるために90度回転しなければなりません。
この動きこそが第2回旋です。
ここで大切なことは屈位と反屈位では先進方向が前後逆であるため第2回旋も反対向きになるということです。
このことは言い換えると、産道の出口は母体前側にあるため、母からみて前側に先進部が進むような前方◯◯位でないと分娩はできないのです。
産道の出口とは反対の後ろ向きに進もうとする後方前頭位や後方後頭位では分娩はほぼ不可能となります。
ちょっと臨床
第1回旋は頭頂位から前屈または後屈する運動です(ちなみに後頭位以外は頭頂位も含めて全て反屈位です)。屈位か反屈位かどうかを判断するのは内診です。前頭部の大泉門と後頭部の小泉門を基準にしてどちら側が先進しているかを診察します。大泉門が先進していれば前頭位(頭頂位、前頭位、額位、顔位)、小泉門が先進していれば後頭位です。
第3回旋と第4回旋
第3回旋は第1回旋とちょうど逆向きの運動になります。
産道が曲線を描いているため、児頭を屈位または反屈位から元の位置に戻そうとする力がかかってしまいます。
そのため最終的には恥骨をくぐるような動きをして産道を通過します。
もし後方後頭位であれば、屈位であるのにさらに屈位となるような力がかかってしまいます。
後方前頭位であれば、反屈位であるのにさらに反屈位となるような力がかかってしまいます。
つまり無理のある胎位となってしまうため分娩は困難となります。
そして最後に第4回旋です。
第2回旋と逆向きの運動をすることで子宮内にいたときと同じ姿勢で生まれてきます。
ここまでは先進方向が前側にくる前方後頭位と前方前頭位が分娩可能であることを見てきました。
前頭位はすべてが経膣分娩が可能ではない
大泉門が小泉門と比較して先進する前頭位は、どれだけ首を上げたかでさらに前頭位、額位、顔位の4つに分けられると考えるといいでしょう。
大泉門が最も先進する前頭位、額が最も先進する額位、顔が最も先進する顔位、そして顎が最も先進する頤(おとがい)位です。
実はこれらは全て経膣分娩ができるわけではありません。
額位置と頤位はちょうど児頭でもっとも大きな面が通過することになるため分娩はほぼ不可能です。
それに対して、前頭位や顔位は後頭位と比較して通過面が大きくなるため難産になることが多いですが自然分娩は可能となります。
以上が経膣分娩が可能な児頭の回旋でした。