もう暗記しない!面白いほど理解できるBPS 徹底解説 

  • 2021年10月25日
  • 2021年11月1日
  • 産科
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今日は、胎児機能評価の一つであるBPSについて学んでいきましょう。

BPSは、①NST、②呼吸様運動、③胎動、④筋緊張、⑤羊水量の5項目で評価します。

覚える項目も多く、産婦人科以外の科目も勉強しなければならない学生にとっては産婦人科を毛嫌いしてしまう原因の一つではないでしょうか?

 

そこで今日は、BPSについて大学の授業では決して扱わないような視点から覗いてみることにします。

 

BPSの評価項目を考えてみる

まずはもう一度、BPSの評価項目を見てみることにしましょう。

①筋緊張、②胎動、③呼吸様運動、④NST、⑤羊水量

です。

ここで注目して欲しいのがこれらの評価項目を妊娠のいつごろに獲得するのかです。

 

①筋緊張②胎動は妊娠のごく初期から見られます。

その後、③呼吸様運動が見られるようになり、そして最後に自律神経が発達して④NSTで様々な波形が見られるようになります。

胎児の成長と進化の関係をこちらでまとめています。

◯筋緊張と胎動

筋緊張・胎動は、ちょうど妊娠7-8週ごろ、ちょうど魚類に相当する時期に見られるようになります。

ところで魚類が生活しているのはもちろん水中です。

ちなみに両生類(爬虫類)は水辺で、そして爬虫類・哺乳類は陸上で生活しています。

 

水中、水辺、そして陸上の中でもっとも酸素濃度が低いのが水中です。

この酸素濃度が低い水中で過ごす魚類のときに筋緊張や胎動が見られるようになります。

つまり、裏を返すと胎動と筋緊張は低酸素に強いと考えることもできます。

 

また胎動や筋緊張は低酸素状態でも観察することができてしまうため、酸素濃度の変化を反映しにくいと考えることもできます。

もちろん、胎動や筋緊張が見られなければ、胎児の生命に危険が迫っていると考えます。

 

ここでまた別の視点から胎児の筋緊張や胎動について考えてみます。

胎児の筋緊張や胎動が見られるようになる妊娠7週から10週くらいの時期はまだ胎盤が作られていません。

胎盤の完成する時期は15週でしたね。

胎盤が完成するまでは胎児への酸素は拡散によって供給されています。

つまり、筋緊張や胎動はそんな低い酸素濃度下で獲得されているのです。

 

それに対して、水中を出て陸上で獲得するような呼吸様運動や自律神経の活動は水中よりも高い酸素濃度が必要になります。

そのため低酸素になるとすぐに影響がでます。

特に最も酸素濃度の変化に反応するのが自律神経の活動を反映するNSTです。

だからこそ胎児の状態を評価するにはNSTを使用します。

そのためNSTに変化があれば子宮内の酸素環境に変化があったことがすぐにわかります。

 

十分な酸素が供給されていれば胎児は基本元気なので、酸素供給の状態をすぐに判定できるNSTはとても重要な検査です。

 

ところで呼吸様運動は呼吸中枢の神経活動を、NSTは自律神経の活動を示しています。

これら神経の活動には大量の酸素が必要になります。

この大量の酸素は拡散だけでは賄いきれないので、胎盤が必要になります。

そのため呼吸様運動やNST変化は胎盤が完成する15週以降から見られるようになります。

◯筋緊張と胎動の違い

すこし本題とずれてしまいますが、BPSの評価項目を見ていると筋緊張と胎動の評価方法は一見同じようにも見えます。

しかし、実はとても異なるものです。

 

筋緊張は体に力が入っているかどうか、胎動は体に力が入ってしっかりと動かすことができるかどうかを見ています。

 

新生児であれば、floppy infantみたいに身体に力が入っているかどうかを実際に触って評価をすることができますが、お腹の中にある胎児の筋緊張はどのように評価するのでしょうか?

 

BPSの筋緊張では「30分間の四肢または体幹の屈曲運動」の有無を確認します。

ここで大切なのは、ヒトの筋肉が屈筋優位であるということです。

つまりヒトの身体は屈筋が優位なので、「筋肉に力が入っていればきっと屈曲するような動きが見られるでしょう」と考えます。

 

羊水減少は独立した評価項目だ!

これまで見てきたのは、実は胎児が急に低酸素状態に陥った場合の反応です。

低酸素になると、NSTで一過性変動や基線細変動が減少・消失といった変化が見られるようになり、そして呼吸様運動もなくなります。さらに低酸素になると胎動や筋緊張もなくなります。

 

低酸素の原因は様々ですが、例えば過強陣痛や胎盤早期剥離などの胎盤機能不全が挙げられます。

 

それに対して羊水は急に低酸素状態に陥ったからといって、すぐに減少するわけではありません。

羊水量が減少するには長期にわたり低酸素にさらされることが必要になります。

これは低酸素になると、大切な脳に酸素を送り続けるために腎血流量を低下させて、脳への酸素供給量を保つためです。

つまり、羊水量だけは長期にわたる慢性的な低酸素状態にさらされていることを示すため、急な低酸素状態への反応を示す他の評価項目とは独立して扱われます。

 

羊水量が少ない(=羊水過少)原因はさまざまですが、いずれにせよ慢性的な低酸素状態を示していることがあるので注意が必要です。

そのため、BPSなど様々な角度から胎児の状態を評価する必要があります。

実際のBPSの点数の付け方

基本的に一過性頻脈が認められるのに胎動や筋緊張がなくなることはありません。

低酸素状態に陥ると、一過性頻脈が消失してから、呼吸様運動、胎動、筋緊張の順に消失していきます。

おし一過性頻脈があるのに胎動が消失していたりする場合は低酸素とは別の原因が考えられます。

具体的には、floppy infantを呈するような筋ジストロフィーといった神経・筋疾患です。

いかがでしたでしょうか?

BPSは単に暗記するだけだと苦痛ですが、その裏側を覗いてみるととても面白いことが見えてきませんでしたか?

 

今回は以上です。

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