分娩編3 分娩第3期 新しい切り口の産婦人科学講座 

  • 2020年5月24日
  • 2020年5月30日
  • 産科
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前回までは分娩第2期までお話しました。

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今回は分娩第3期について見ていきましょう。

 

分娩第3期は胎盤が娩出されるまでです。

胎児が娩出され子宮がさらに収縮するようになると子宮と胎盤の接触面にズレが生じ、胎盤が自然と剥離するようになります。

すると剥離面から出血し、さらに胎盤が剥離していきます。

この出血は剥離出血とも呼ばれます。

さて胎盤が剥離しているかどうかを確認する方法として、剥離徴候を確認することが挙げられます。

胎盤剥離徴候

Ahlfeld(アーフェルド)徴候

胎盤が剥離してくると臍帯は徐々に下がってきます。

実際の分娩では、臍帯にコッヘル鉗子をつけるので、それを目印に分娩直後よりも下がっているかどうかを確認します。

 

Strassman(ストラスマン)徴候

胎盤が剥離している場合、子宮底を叩いても子宮と胎盤の間に空間ができるため振動はつたわりません。

 

Schroder(シュレッダー)徴候

胎盤が剥離し十分に子宮が収縮すると子宮が細長くなり子宮底が上昇します。またS上結腸により右に傾くようになります。

 

Kustner(キュストネル)徴候

恥骨上を押すと子宮は押しつぶされて子宮底部は頭側に移動します。剥離していないと臍帯も一緒に引き戻されますが、剥離していると引き戻されることはありません。むしろ臍帯が出てきます。

 

Mikulicz-Radecki(ミクリッツ-ラデッキー)徴候

また剥離して胎盤が下降してくると、膣を通して直腸を刺激するため便意を催すようになります。

 

 

これらの徴候は国家試験的にもとても大切なものですが、

無理して剥離徴候の名前を医師国家試験では覚える必要はないです

大切なのは剥離していてどんなことが起こるかを理解することです。

 

☞ちょっと臨床

臨床ではこれらの剥離徴候を確認するよりも、もっと大切なことがあります。

それは内診です。

内診をして胎盤の実質が子宮口よりも外にあることを確認できれば、胎盤はしっかりと剥離しています。

子宮収縮と止血

ところで子宮は収縮することで胎盤と子宮の接着面にズレが生じ、胎盤が剥離することは先ほど説明しました。また子宮が収縮することで血管が圧迫されるため剥離面からの出血も少なくなっていきます。

最も収縮するところは子宮の底部です。

それに対して子宮口付近に近づけば近づくほど収縮力は弱くなります。

そのため前置胎盤など子宮口付近に胎盤が付着している場合、子宮収縮力が弱いため剥離しにくくなります。

また血管も圧迫されないため出血量が増えてしまう傾向にあります。

そのため子宮頸部からの出血は子宮収縮による圧迫止血を期待するよりも、バクリバルーンなどによる物理的圧迫止血の方が効果的なことがあります。

 

以上で正常分娩の講義は終わりです。大まかに理解できたでしょうか?ここまで理解できたら問題を解きながら、肉付けしてくだけです。おそらく今まで以上に理解が進むのではないかと思います。

次回からは異常分娩について見ていくことにします。

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