さて今回は妊婦健診での尿定性検査について見ていくことにします。
この記事を読むこんなことがわかります。
☑︎妊婦は尿検査で尿糖が出る機序が分かります。
☑︎腎臓の基本的な機能が分かります。
妊娠中の尿糖陽性
普段の妊婦健診ではスティックを使った尿定性検査が行われ、妊婦さんでは尿糖陽性(1+)と出ること決して珍しくありません。
しかし尿糖1+だから妊娠糖尿病というわけではないです。
それはどうしてでしょうか?
教科書にはよくこんなことが書いてあります。
妊婦では循環血液量が増加し腎血流が増えるため尿糖が陽性になることがある。
それではどうして腎血流量が増えたら尿糖が陽性になるのでしょうか?今回はその仕組みについて考えてみることにします。
腎臓の仕組み
まずはなぜ尿糖が陽性になるのかを知るためには腎臓の機能を理解する必要があります。
腎臓は血液のろ過装置と呼ばれ、不要な物質を排出しています。
しかし、実は腎臓には不要な物質のみを捨てる機能はありません。
ではどのようにして不要な物質を捨てているのでしょうか?
そこで次のような仕組みを作りました。
必要なものも不必要なものも全て原尿として排泄してから尿細管で必要な物質のみを再吸収するという仕組みを作りました。
ここで大切なことはいったん必要なものも不必要なものも全て排泄するということと必要なものを再吸収するということです。
尿糖陽性の原理
糖ももちろん一旦原尿として排泄されますが体にとって必要なものなので再吸収されます。
非妊娠時は原尿のほぼ全ての糖が再吸収されます。
しかし妊娠すると最大で約1.5倍程度に循環血液量が増えてしまうため糸球体で濾過される血液量(腎血流量)が増えます。
つまり原尿が増えるのです。
しかし、尿細管で再吸収できる糖の量は限られているため、再吸収されなかった糖は尿として出て来てしまいます。
そのため妊娠中は尿糖が陽性となることがあるのです。
つまり尿糖が陽性だとしても大きな問題はないことが多いです。
尿蛋白が陽性となることもあります。
腎血流量が増えるということは腎臓にどうしても負担がかかってしまいます。
そのため腎臓の網の目が大きくなってしまい普段網の目をくぐらない蛋白も網の目をくぐってしまうことがあります。
そのため蛋白が陽性となることがあります。
尿糖陽性が問題となるとき
しかし、尿糖が強陽性(3+)と尿中に大量の糖が出ているときは注意が必要です。
特に2回連続している場合は妊娠糖尿病などが隠れている可能性があります。
そのため75gOGTT検査などが必要となることがあります。