月経編2(月経不順・不正出血) 新しい切り口の産婦人科学講座

  • 2021年1月5日
  • 2021年1月9日
  • 婦人科
  • 1160view

今日からは月経不順・不正出血について見ていこうと思います。

この章を読むことで月経不順や不正出血について強くなれるのではないかと思います。

月経不順や不正出血の仕組みがわかると薬の使い方もわかるようになります。

しっかりとついて来てください。

 

まずは出血が起こる仕組みについてしっかりと理解していきましょう。

出血が起こる仕組みがわかると月経も不正出血も理解できるようになります。

 

消退出血と破綻出血

どうして月経がおこるのでしょうか?

どうして不正出血、つまり月経でないときに出血がおこるのでしょうか?

 

この疑問に答えるには消退出血と破綻出血について理解しないといけません。

まずはここから始めることにしましょう。

 

消退出血

消退とは「消えてなくなること」を意味します。

つまりエストロゲンやプロゲステロンといったホルモン量が減少することにより出血することを消退出血といいます。

月経は消退出血の一つです。

 

破綻出血

破綻出血とはホルモンが一定期間以上作用することによって起こる出血のことです。

一般的にはエストロゲンにより子宮内膜が成長しすぎて支えきれずに内膜が破綻して出血することを言います。

 

それではエストロゲンとプロゲステロンによる消退出血、破綻出血について見ていきましょう。

 

月経と呼ばれる出血は、

プロゲステロンによる消退出血

です。

 

エストロゲンの破綻出血

エストロゲンの消退出血

プロゲステロンによる破綻出血

不正出血として自覚されます。

 

このような月経以外の出血を機能性不正出血といいます。

それではそれぞれの出血について見ていきましょう。

 

プロゲステロンの消退出血

月経の正体です。

エストロゲンは子宮内膜を増殖させる栄養です。

しかし、ある程度、子宮内膜が成長するとその厚さを支えきれずに不安定になってきます。

そこで登場するのがプロゲステロンです。

プロゲステロンは成長した子宮内膜を安定化し分厚くても崩れないようにしてくれます。

プランターを例にすると栄養剤がエストロゲンで、支柱がプロゲステロンと考えるとわかりやすいかもしれません。

しかし、その支柱であるプロゲステロンの分泌が止まってしまうと分厚くなった子宮内膜はその厚さを支えきれずに崩壊してしまいます。

これがプロゲステロンの消退による出血、つまり月経です。

子宮内膜が全て剥がれるので出血量は多くなります。

 

ここからは解説する

エストロゲンによる破綻出血、

エストロゲンの消退出血、

プロゲステロンのによる破綻出血

は不正出血として自覚されます。

このような月経以外の子宮筋腫など明らかな原因のない出血を専門用語で機能性不正出血といいます。

ちなみに逆は器質性出血で子宮筋腫などの明らかな原因(器質)がある出血です。

 

エストロゲンによる破綻出血

子宮内膜はエストロゲンがある限りは成長し続けますが分厚くなればなるほどその厚さを支えきれなくなります。

月経の異常で排卵しなくなると卵胞は黄体にならないためプロゲステロンは分泌されません。

プロゲステロンがないと分厚い子宮内膜の厚さを支えきれなくなるため崩壊してしまいます。

ちょうど支柱がない植物が成長しすぎて折れてしまうようなもので、栄養が行き届かない表面からの出血のため少量の出血です。

卵胞が存在し続ける限りエストロゲンは放出されるため長期間たらたらと続きます。

エストロゲンの消退出血

子宮内膜の栄養はエストロゲンです。

そのため栄養がなくなると子宮内膜が枯れてしまい出血が起こってしまいます。

これがエストロゲンの消退出血です。

これが見られるのは排卵の時期です。

排卵により卵胞が傷つくと一時的ですがエストロゲンの分泌が低下します。

それによりエストロゲン(栄養)が行き渡らなかった表面の一部の内膜が剥がれてしまうというわけです。

あくまで一過性の内膜表面からの出血のためごく少量の出血です。

プロゲステロンによる破綻出血

黄体は基本的に約14日間しかプロゲステロンを分泌することができません。

14日経過すると白体となります。

しかし、黄体がゾンビのように中途半端なプロゲステロンを分泌し続けてしまうことがあります。

すると古い子宮内膜が完全に剥がれずに一部残ってしまうことがあります(子宮内膜の不全剥離)。

そんな古い不安定な子宮内膜の上に次の月経周期の子宮内膜が形成されることがあります。

そのため不安定な一部の古い内膜が崩れることで出血してしまうことがあります。

このような、排卵後の黄体からプロゲステロンが長期にわたって分泌されることで出血してしまうことをプロゲステロンによる破綻出血といいます。

 

月経ほどでないですが出血量は多く不安定な内膜が全て剥がれるまでは長く出血が続いてしまいます。

排卵性機能性出血と無排卵性機能性出血

プロゲステロンによる破綻出血のように排卵後の黄体退縮不全が原因の出血(プロゲステロンの長期分泌)を排卵性機能性出血といいます。

それに対して排卵が起こらず黄体が形成されないためプロゲステロンが分泌されないことがあります。

それによってエストロゲンが長期にわたって子宮内膜に作用し破綻出血をきたしてしまいますが、これを別名、無排卵性機能性出血といいます。

 

ここまでが月経とそれ以外の子宮からの出血の仕組みについての説明でした。

最新情報をチェックしよう!