胎児心拍モニタリング編1 新しい切り口の産婦人科学講座

  • 2020年5月30日
  • 2020年8月28日
  • 産科
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前回までは、正常および異常分娩について説明してきました。

今回からは初学者にはなかなかイメージがしにくい胎児心拍モニタリングについて説明していきます。

注意 これはあくまで初めてCTGを学ぶ人向けです。

 

胎児心拍モニタリングであるCTG(Cardio Togo Gram: 胎児心拍陣痛図)は,

胎児の状態を評価する一つの方法です。

 

結論からいうと胎児の状態を評価するのに最も大切なことは、

基線と基線細変動が最も大切

ということです。

 

それではどのように解釈していくかを見ていきましょう。

 

胎児心拍モニタリングの見方

見る順番は

①基線細変動(心拍数の細かな変化=副交感神経と交感神経の綱引き)

②基線(平均心拍数)

③一過性変動(心拍数の増加や減少)

この順番に見ていきます。

心拍数が減少すると大変なことが起こっているのではないかとすぐに目が行ってしまいがちです。

しかし、一過性変動はあくまで、子宮収縮により胎盤血流が減少してしまうストレスに対する反応を見ているだけです。

胎児の今の状態を見ているのは、基線細変動と基線です。

 

さて、各項目について、少し詳しく見ていきましょう。

もう一度確認です。

大切なことは、

①基線細変動と②基線は胎児の今の状態を、

③一過性変動は胎児のストレス(子宮収縮)に対する反応

を示しているということです。   

①基線細変動

これは自律神経である交感神経と副交感神経の駆け引きにより生み出される心拍数の変化です。

自律神経は酸欠に弱いため、もっとも俊敏に反応します。

もし酸欠により自律神経が機能しなくなると心拍は心臓がなんの刺激がなくても拍動する自動能でしか心拍を打てなくなるためモニター上は基線が平坦になっていきます。

5から15bpm以内は正常、5以下は減少、2以下は消失と判定します。

減少、消失している場合は低酸素血症が進行し、アシデミアにまで至っている可能性があり、注意が必要です。

 

15bpmを超えるような場合は増加と判定します。

例えば酸欠による徐脈のストレスからの回復時に、カテコラミン(アドレナリンなど)が大量に放出されたときに一時的に見られることが多いです。

 

☞ちょっと臨床

基線細変動は交感神経と副交感神経の駆け引きと説明しました。

そのため頻脈など交感神経が優位になる場合や、徐脈など副交感神経が優位になるような場合も基線細変動は減少する傾向にあります。

②基線

基線は平均の心拍数です。

通常は110-160bpm台です。

運動したりすると僕らの心拍数は増えますよね。

同じように胎児もたくさん動いたり、または何らかのストレスがあったりすると胎児心拍も上昇します。

注意しないといけないのは低酸素など苦しい場合の心拍数の上昇です。

苦しい状態、つまり低酸素状態がある程度継続すると自律神経の働きも弱くなるため心臓の自動能のみの心拍数となるため徐脈となります。

自律神経が働いていないため、基本的には徐脈の場合、基線細変動は減少ないし消失しています。

 

 

③一過性変動

ストレスに対する反応です。

一過性頻脈と一過性徐脈に分類されます。

一過性頻脈はストレスでドキッってするくらい胎児が元気な証拠です。

それに対して一過性徐脈はストレスに対する生理的な反応の場合もありますが、低酸素に対する反応であることもあり注意が必要です。

一過性徐脈は主に4つに分類されます。

早発一過性徐脈 子宮収縮と同時に心拍数が低下

変動一過性徐脈 子宮収縮後、30秒以内に心拍数が低下

遅発一過性徐脈 子宮収縮後、30秒以上かかって心拍数が低下

遷延一過性徐脈 3分以上10分未満心拍数が低下

それでは詳しく見ていきましょう。

①早発一過性徐脈

これは児頭圧迫によるものです。

胎児の頭は応形機能といい、コツ融合していないため、児頭が圧迫されると脳圧が上昇してしまいます。

Cushing現象って覚えていますか?脳出血など脳圧が上昇すると徐脈になる現象ですが、同じことが胎児でも起こっています。

あくまで生理的な反応なので気にすることはないです。

②変動一過性徐脈(血流低下=酸素濃度は正常)

これは臍帯圧迫によるものです。

圧迫なので血中酸素濃度は正常でも血流そのものが低下してしまい徐脈となります。

臍帯がどのように圧迫されるのかで心拍数の低下も変化してくるため、

子宮収縮ごとに心拍数の低下も様々です。

そのため変動と呼ばれます。

臍帯が圧迫されるということは、僕らでいうと首を絞められているようなものです。

臍の緒が圧迫されることで血流が低下するので臍の緒から胎児までの距離分だけ時間差があります。

おおよそ30秒以内です。

*実際は臍帯動脈が圧迫されるため血圧が上昇し徐脈となりますが、便宜上、血流低下による低酸素によるものとします。

 

③遅発一過性徐脈(酸素濃度の低下=血流は正常)

子宮収縮により胎盤の酸素濃度が低下するため血流は十分にあっても胎児血中酸素濃度は低下します。

子宮収縮がおこると基本的に胎盤の絨毛間腔の血流が低下するため酸素濃度が低下してしまいます。

胎盤と胎児の距離分だけその変化に時間差があり、30秒以上かかります。

そのため遅発と言われます。

 

そう考えると、子宮収縮がおこるたびに心拍数が低下しそうです。

しかし、実際には低下することは少ないです。

どうしてでしょうか?

それは胎児は少々の酸素濃度が低下しても心拍数が低下するほど血中酸素濃度は低下しないからです。

これを酸素予備能といったりします。

私たちも元気なときは酸素濃度が少々低下しても苦しくないですが、

元気がないときは酸素濃度が少なくなるとすぐに苦しくなりますよね。

つまり遅発一過性徐脈が起こるということは、何らかの原因で胎児が低酸素状態に陥っていることを示しています。

ではどのような時に胎児は低酸素に陥るのでしょうか?

 

胎児血中酸素濃度が低下するとき

酸素低下する要因と酸素回復する要因の比で低下のほうが大きくなる場合のときです。

 

具体的には

回復速度が遅い時

酸素低下量が多い時です。

酸素濃度を低下させる要因

基本的に胎児の酸素濃度が低下するときは

①臍帯が圧迫されるとき

②子宮収縮により胎盤の血流が低下するとき

の2つです。

先ほど臍帯が圧迫されることは首を絞められるのと同じと説明しましたが、

強く首を絞めたり、長い間首を絞めるとしんどくなりますよね。

また空気中の酸素濃度が低かったり、長い間低い状態が継続してしまってもしんどくなります。

なぜ過強陣痛も注意しないといけないかというと、子宮収縮により強く臍帯を圧迫したり、胎盤血流を低下さたりするなど胎児に強いストレスを与えるため注意が必要だからです。

 

酸素濃度の回復させる要因

子宮収縮していないと絨毛間腔の血流が回復し、胎児酸素濃度も自然と回復します。

しかし、胎盤の状態によって、その回復が遅れてしまうことがあります。

具体的には、

①胎盤が胎児に比して小さい場合。

②胎盤梗塞で部分的に胎盤の血管が閉塞してしまい機能しなくなった場合(胎盤機能不全の原因の一つ)

③臍帯辺縁付着の場合(胎盤は正常でも臍の緒の位置が辺縁付着など変な位置にあると十分な血流が臍の緒に行かないため。)

などが挙げられます。

このような時は子宮が収縮していな時の酸素化の回復が遅れ、かつ強い収縮ですぐに低酸素に陥ってしまうため注意が必要です。

 

このように胎児血中酸素濃度を下げる要因と回復する要因の比が崩れると徐々に胎児は低酸素血症に陥ってきます。

 

☞ちょっと臨床

具体的には変動一過性徐脈の安全限界である

1)10分間に4分以上の徐脈

2)深さが60bpmを超える、または最下点が70bpm以下

となるを超える場合は、徐々に低酸素に陥ってきます。

3)持続時間2分以上、間欠2分未満の過強陣痛

でも低酸素状態となってきます。

そのため、アトニン(オキシトシン)による陣痛誘発や促進などでは過強陣痛にならないように注意が必要です。

 

Reassuring Fetus Statusとは

さてここでreassuring fetus statusについてです。

reassuring つまり安心できる胎児の状態ということです。

①正常脈であること

②基線細変動がしっかりとあること

③一過性頻脈があること

④一過性徐脈がないこと

これら4つの条件を満たした時をさします。

この時はたしかに胎児の状態は大丈夫ですが、これらを満たさないからといって胎児が危ないというわけでは決してありません。

あくまで絶対に大丈夫というところを示しているだけです。

 

低酸素血症の進行とモニタリングの変化

さてでは低酸素となっていくとどのような過程で胎児が低酸素担っていくのかを具体的に示していきます。

まず低酸素が進行すると、そのストレスにより頻脈となります。

交感神経優位となるため基線細変動はやや低下します。

臍帯圧迫による変動一過性徐脈は、正常時より深く低下するようになりますが、基線細変動は保たれています。

この時期から遅発一過性徐脈が出てくるようになりますが基線細変動は保たれています。

しかし、もっと低酸素状態が進むと、徐脈となり基線細変動も減少または消失します。

一過性変動も基線細変動がなくなり、遅発一過性徐脈では徐脈となっているため最下点への下げ幅も少なくなってしまいます。

以上が基本的な胎児心拍モニタリングの考え方となります。次回はより詳細に実践的な見方などを見ていきます。

☞より詳しく知りたい方へ

CTGの勉強をするときにいろいろな本があって困ったことはないですか。

読み切りやすい本として、胎児心拍数モニタリング 第3版をおすすめします。

この本のいいところは、ところどころで胎児生理学的になぜが記載されているところです。

どうして変動一過性徐脈がおこるのかなどを、胎児生理学的視点から記載されています。

この本を1冊よみきるだけでもより深くCTGを読み取ることができるようになります。

値段もそこまで高くないところも魅力です。

 

 

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