分娩編2 分娩第1-2期 新しい切り口の産婦人科学講座 

  • 2020年5月22日
  • 2020年9月6日
  • 産科
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前回は胎児が娩出するまでの動きである回旋について見ていきました。

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今回は実際に分娩がどのように進むのかについて考えていきます。ご存知のように分娩はおおきく3つの段階に分けて考えていきます。

 

分娩第1期:子宮の出口が全開大するまで(第1から第2回旋)

分娩第2期:胎児が出てくるまで(第3から第4回旋)

分娩第3期:胎盤が出てくるまで。

 

ここで分娩第1期と第2期のイメージを持ってもらうため、

ちょっとボールと穴を想像してみてください。

自然の重力を陣痛、手で押す力がいきみと仮定します。

・分娩第1期はボールが穴にハマるまで

穴にハマるまでは自然と進みますよね。つまり陣痛のみで進みます。

ここまでが分娩第1期です。

・分娩第2期は穴をボールが通り抜けるまで

しかし、ボールが穴を通ろうとしたら、重力だけでは自然には進みません。

手で押してあげないといけませんよね。つまりいきみをかけてあげる必要があります。

このボールが穴を通り抜けるまでが分娩第2期です。

 

ちなみに分娩第2期でボールは穴に合わせて変形しながら、穴を通り抜けていきますね。

実際の児頭も骨が融合していないので、産道に形を合わせながら産道を通過していきます。

これを児頭の応形機能といいます。

なんとなくイメージできましたか?

 

ではさらに詳しく見ていきましょう。

分娩第1期

子宮の出口が全開大するまでの期間です。

胎児で一番大きな児頭が産道で一番狭いところを通るための準備をする時期

です。

 

具体的には2つのことが起こっています。

①子宮の出口が緩むこと(これを頸管熟化といいます。)

子宮の出口が緩むまでには時間がかかるので潜伏期といいます。

そして出口が緩んだら、

②陣痛の力で骨盤の深いところまで徐々に胎児を押し出してあげる(第二回旋まで終わらせてあげる)ことです。

子宮の出口が一気に開くため加速期と呼ばれます。

それではおのおのについて見ていきましょう。

1)頸管の熟化(潜伏期)

子宮は3000g前後の胎児と羊水を含めた合計4kg 弱の重さを支えられるくらい、普段の子宮の出口はしっかりと閉まっています。

しかし、このままでは陣痛起こっても出口が閉じきっているのでなかなか胎児は出てきません。

まずは出口が緩むことが必要です。

どのくらい子宮の出口が緩んでいるのかを評価するのが有名なBISHOPスコアです。

 

BISHOPスコアは、

①子宮の出口の硬さ(硬度)

②子宮の出口がどれだけ開いているか(開大度)

③子宮の出口がどれくらい伸びきっているのか(展退度)

④児頭がどこまで深く入ってきたか(児頭の位置)

⑤子宮の出口はどちらを向いているのか(子宮口の位置)

の5項目について点数をつけて評価していきます。

 

BISHOPスコア9点で分娩をするのに子宮の出口が十分に緩くなった、つまり頸管が熟化したと評価します。

 

頸管が緩まないと…

ちなみに頸管が柔らかくならずに第1回旋のみがおこったらどうなるでしょうか。

図のように子宮の出口が十分に柔らかくないので骨盤深くまで頭は侵入しません。

児頭を骨盤深くまで侵入させるために頸管は柔らかくなります。

 

それでは子宮頸管は次のような過程で熟化していく、すなわちBISHOPスコアがどのような過程で9点以上に頸管が熟化していくかについて見ていきましょう。

 

大きく2つの過程があります。

①出口が柔らかくなる

まず下図のように、一番硬く狭い子宮の出口が柔らかくなります。(硬度が柔になる)

②第一回旋を行い児頭が深いところに進む(固定)

すると子宮の出口が柔らかくなるので陣痛の力で第一回旋を行い児頭がより深いところに潜り込むことができるようになります。

児頭の先端の高さとしてはちょうど一番狭いところ(±0)です(児頭の位置±0)

深く入り込めば入り込むほど子宮の出口は引き伸ばされて子宮の出口は広がり(開大度3cm)、かつ薄くなっていきます(展退度60-70%)

また児頭が下がってくるにつれて子宮の出口は前の方をむくようになります(子宮口の位置 中-前方)

もともと子宮の出口は生理的に後ろを向いています。しかし、産道の自然な流れは前方を向いています。子宮の出口は児頭が進もうとする方向を向きます。そのため児頭が産道にそって下降してくるにつれ、子宮の出口は徐々に前方を向くようになります。ちなみに子宮口は先進部(小泉門)の方向を向いてきます。

第一回旋が終了するころには、BISHOPスコアでは9点、つまり頸管が熟化してきます。

陣痛による出産の準備が整ったと判断します。

2)陣痛の力=娩出力となるとき(加速期)

図をよく見てください。

第1回旋が終了し頸管が熟化(BISHOPスコア9点)するころには、

子宮と産道がほぼ一直線となり、子宮の収縮による娩出力が無駄なく胎児にかかり分娩が進行するようになります。

陣痛、

つまり子宮収縮力である娩出力が胎児にしっかりとかかるので一気に分娩が進みます。

加速期と言われる時期です。

そして子宮口が全開となるころには、第二回旋が終了して児頭の一番大きいところが産道で最も狭い子宮口にまで到達します。

分娩第2期

子宮口が全開大は10cmです。

この大きさは児頭の平均的な大きさです。

胎児の頭の一番大きいところを産道の一番狭いところである子宮口に達したと見ることができます。

一番狭いところを胎児の一番大きな頭が通るので、ここからは自然の子宮収縮である陣痛だけで十分な力にはなりません。

そこで、いきみ(腹圧)をかけさせて、娩出力を高めます。

子宮収縮だけでなく、腹圧もかかるので子宮への血流量もさらに低下してくるため、胎児にとってもしんどい時期でもあります。だからこそ経産婦では1時間、初産婦では2時間で分娩させます。

もっとも狭いところを出たり引っ込んだりして出ようとするのを排臨、そして狭いところを通り抜けたら発露と言います。

このようにして胎児は最も狭いところを通り抜けて、第3回旋、第4回旋を経て娩出されます。

 

次回は分娩第3期、胎盤娩出まで見ていきます。特に剥離兆候に注目していきます。

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