若い女性の悩みであるのが月経困難症です。
とりあえずロキソニン、とりあえず漢方、とりあえず低容量ピル(LEP)と、とりあえず何かしら処方すればなんとかなるのが月経困難症です。
今日は普段は考えない月経困難症についてちょっと考えてみましょう。
注意:ちなみに月経困難症は、肉眼的に原因のある器質性月経困難症と肉眼的には原因のない機能性月経困難症があります。器質性の多くは子宮内膜症、子宮腺筋症、そして子宮筋腫などで、これらの好発年齢は30歳以降です。今回はそれよりも若い10歳から20歳台に起こりやすい機能性月経困難症について考えていきます。
子宮が使われ始めるのは10歳台になってから
心臓、肝臓、腎臓、消化管などの臓器と異なり、子宮が使われ始めるのは生理が始まる10歳台からです。
つまり、子宮はもともとは使われていない血流が悪い臓器です。
本気で使われる様になるのは妊娠からです。
妊娠をすると子宮にたくさんの血流が送られ、その後も血流がよくなります。
しかし、それまでは血流は悪く、指のしもやけのような状態となっているんです。
子宮内膜が剥がされるんです。痛いに決まっているんです
月経は、古くなった子宮内膜が排出されることです。
子宮内膜が剥がされるというのは、かさぶたを剥がすようなものなので、痛いに決まっています。
さてここで大切なのはプロスタグランジンという炎症物質の存在です。
もともとプロスタグランジンは怪我などをしたときに、
細菌が血管に入るのを防ぐために血管(平滑筋)を収縮させる物質のことです。
このプロスタグランジンは、子宮内膜が剥がれるときにも、もちろん産生されます。
ちなみに血管を収縮させる正体は平滑筋ですが、
同じ平滑筋によって子宮は形作られています。
つまり子宮内膜が剥がれることで作られるプロスタグランジンによって子宮が収縮して、剥がれた子宮内膜を排出しています。
これが月経です。
月経困難症の本当の犯人にせまる
子供を産んでいない子宮の出口はとても狭くなっています。
そのため子宮内膜を子宮の外に排出しようとしても、出口が狭くてうまく排出されません。
そうするといらなくなった子宮内膜が子宮内にとどまることとなり、余分なプロスタグランジンが作られてしまいます。
しかも子宮の血流が悪いため、高濃度のプロスタグランジンが子宮内にとどまることとなり、より強く子宮が収縮することになります。
これが月経痛の正体である下腹部痛です。
どうして全身に症状がでてしまうの?
子宮だけにプロスタグランジンが貯まっているだけなら、子宮の収縮(下腹部痛)だけで済みます。
しかし、余分なプロスタグランジンが子宮からあふれてしまうと、全身にプロスタグランジンが回ってしまいます。
ちなみにプロスタグランジンは平滑筋を収縮させるのでしたね。
ですので、例えば胃の平滑筋に作用したら上腹部になりますし、頭の血管に作用したら、頭痛として症状がでます。これが月経困難症の正体です。
このように
👉血流が悪いことによりプロスタグランジンが子宮内にとどまってしまうこと
さらに
👉あふれてしまったプロスタグランジンが全身に作用してしまうこと
が月経困難症の正体です。
ですので、
●血流をよくすること
●余分なプロスタグランジンが作られることを抑えること、
これらが治療のターゲットとなります。
血流が悪いことに対しては漢方が使われます。
よく使われているものとしては当帰芍薬散というものがあります。
血流が良くなれば、子宮に余分なプロスタグランジンが貯留せずに、過度な子宮収縮を抑えることができます。
プロスタグランジンが作られることに対してはNDAIDsが使用されます。これはプロスタグランジンの合成を抑制してくれます。
未産であることが月経困難症の原因の一つと考えると、月経困難症は晩婚化し初産年齢も高くなった現代病の一つと見ることもできます。
月経困難症ひとつをとっても、いろいろな見方ができます。
月経困難症の治療には他にもピルが使用されます。また特集でピルの新しい見方についてお話していきますね。以上です。