卵巣過剰刺激症候群から見えてくるエストロゲンの本当の作用

卵巣過剰刺激症候群(OHSS)って覚えていますか?

多くの本の解説では、

「排卵誘発剤による副作用で卵巣が浮腫を起こし、さらに重症になると胸などに水が溜まったりする病気」であると書かれています。

名前のように卵巣を過剰に刺激することにより起こる疾患ですが、いまいちぱっとしません。

 

この卵巣過剰刺激症候群を理解するためには、実は正常の排卵を理解すると見えてきます。

 

通常の排卵前の卵巣も浮腫んでいる

 

実は正常の月経周期においても排卵前後の卵巣は浮腫を起こしています。

手術を見たことがあれば排卵前後の卵巣が腫れているのを見たことはないでしょうか?

 

ではなぜ浮腫をおこすのでしょうか?

その鍵はエストロゲンです。

排卵前の卵胞は成長してエストロゲンが産生するようになります。

そのため卵巣には局所的に高濃度のエストロゲンが存在します。

ここでエストロゲンの作用の一つであるお肌に潤いを持たせるという効果に注目してみましょう。

それが強くなってしまったらどうなると思いますか?

そうです。むくんでしまうのです。過度な潤いはむくみ、浮腫です。

排卵前の卵巣はエストロゲンがいっぱいで、むくんでしまうのです。

エストロゲンと血栓症

でも卵巣がむくむことは実はとても理にかなっています。

むくむということは血管の外に水分が逃げてしまうということです。

卵巣はエストロゲンにより局所的に血管内脱水により血栓ができやすい状態となります。

かつエストロゲン自体が血栓を作りやすい状態とするので、

排卵したときに出血が止まりやすくなります。

ですので排卵で起こる卵巣出血は止まります。

ちなみにエストロゲンを含むピルは下肢静脈血栓症が問題になりますよね。

どうしてエストロゲンで血栓症になるかって、それは卵巣出血を止めるためです。

卵巣過剰刺激症候群の正体に迫る

たった一個の排卵だけでも卵巣は浮腫んでしまいます。

それでは不妊治療のために、人工的にたくさんの卵胞を育てる排卵誘発剤(多くは卵胞ホルモン)を使用した場合はどうでしょうか。

人工的に通常の月経周期以上の卵胞ホルモンが体内に存在することになるので、多くの卵胞が育ちます。

たくさんの卵胞が育つということはより多くのエストロゲンが産生されます。

通常の月経周期でもエストロゲンにより卵巣はむくんでしまうのに、

こんなに卵胞が発育してしまったらどうなるでしょうか。

卵巣はもちろんですがが、

血中にも多くのエストロゲンが行きわたり全身がむくんでしまいます。

このように考えたら胸に水がたまるのも容易に理解できませんか?

これが卵巣過剰刺激症候群の正体です。

また通常の卵巣でも排卵時の止血のために血管内脱水による血栓傾向となるのであれば、

卵巣過剰刺激症候群でも全身に血栓ができてもおかしくないですよね。

 

卵巣過剰刺激症候群ひとつ考えるだけで、いろんなことが見えてきませんか?

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