卵巣出血と異所性妊娠。
この2つの疾患は女性の腹腔内出血を伴う急性腹症として有名な疾患です。
しかし、その性質は対照的です。
卵巣出血は止血するのに対して、
異所性妊娠は出血は止まらず、手術による止血術が必要となります。
一体何が違うのでしょうか?
卵巣出血はエストロゲンによって止血する
以前の記事で卵巣出血は止血するとお話ししました。
血管内脱水となり血液がドロドロになることやエストロゲン自体で血液を固まりやすくするために、
血栓ができやすくなり止血するとお話ししました。
実際に卵巣出血の場合、ダグラス窩に溜まった血性腹水を採取しようとしても、血餅(凝固した血の塊)によってなかなか採取できません。
異所性妊娠とは局所的なDICです
卵巣出血の場合と異なり、異所性妊娠ではダグラス窩穿刺をすると容易に血性腹水を採取できます。
これはなぜでしょうか?
それは異所性妊娠では局所性にDICが起こっているからです。
DICとは止血に必要な大きな血栓が作られずに止血するには小さすぎる血栓が大量に作られてしまう疾患です。
一旦、破裂してしまうと微小な血栓が作られてしまうため、なかなか止血できません。
実は局所的なDICが起こっているのです。
そのため異所性妊娠で見られる血性腹水はサラサラで、よく観察すると微小血栓を確認することができます。
このように産科の出血によって引き起こされるDICは産科DICと呼ばれるくらい、出血によってDICが引き金となり起こりやすいのです。
妊娠初期での異所性妊娠でさえも、局所的なDICにより大量出血に至ります。
では妊娠満期ではどうでしょうか?
次回は産科DICについて考えていきます。