卵巣癌はその種類が豊富でなかなか整理がつかない部分だと思います。
漿液性腫瘍であったり粘液性腫瘍であったりと覚えることが多くて挫折してしまいそうになります。
今回は卵巣腫瘍の種類をしっかりと整理して覚えることができるようになるのが目標です。
卵巣癌の種類は大きく分けて3種類です。
上皮性、性索間質性、そして胚細胞性腫瘍です。
上皮性は卵巣を覆っている上皮成分由来。
性索間質性とは卵子の周りを覆っている莢膜細胞や顆粒膜細胞由来の腫瘍です。
まれに精子を覆うライディッヒ細胞やセルトリ細胞由来の腫瘍もあります。
そして胚細胞性腫瘍は卵子といった胚細胞由来の腫瘍です。それでは各々について見ていきましょう。
上皮性腫瘍
イラストでは卵巣の表面を覆う上皮由来の腫瘍から発生する腫瘍です。
排卵などで傷つき修復されることを繰り返すうちに、遺伝子に変異がはいることで癌化すると言われています。
しかし、不思議なことに、上皮性腫瘍の組織型は実は卵管、子宮内膜、子宮頸管腺(消化管)に類似していることがわかっています。
例えば、漿液性腫瘍であれば卵管癌と組織型が類似しています。
類内膜腺癌や明細胞癌は子宮内膜の組織に類似しています。
粘液性腫瘍は子宮頸管腺の組織に類似しているといった具合です。
様々な組織型を示す理由
これはおそらく2つの環境因子が関与していると思います。
1つは卵巣は卵子という単細胞を成長させることができるくらい環境がよいこと。
2つ目は子宮内膜は受精卵を成長させるくらい栄養満点で、その栄養満点の子宮内膜に腫瘍の原料となるような頸管腺や卵管の細胞、子宮内膜の細胞が紛れ込んでしまい、月経時に逆流したときに排卵で傷ついてしまった卵巣に入ってしまい、それが成長することで癌化するといった具合です。
粘液性と漿液性
子宮頸管はネトネトな粘液を、卵管はサラサラな漿液を分泌します。
子宮頸管の粘液は月経中にその性状が変化します。
増殖期、つまり内膜が肥厚しているときは膣からの細菌感染を防ぐために粘稠度が極めて高い分泌液を出すことで子宮頸管に栓をします。
これは受精卵が着床したら子宮内膜は受精卵を育てないといけないため栄養が豊富で細菌の餌になってしまうからです。
排卵期はむしろ精子が遡上してくるため、粘稠度の低い分泌液となります。そのため頸管は粘液が分泌されます。
それに対して卵管はサラサラな漿液を分泌します。
これは精子が遡上しやすいようにサラサラである必要があるためと受精卵が卵管の繊毛上皮の動きで子宮へ運ばれやすくするためです。
上皮性腫瘍の種類
上皮性腫瘍の分類はとても単純です。良性腺腫、境界悪性腫瘍、そして腺癌の3つに分類されます。
性索間質性腫瘍
卵子や精子の周りを覆う細胞の腫瘍です。
一般的に胚細胞、つまり卵子や精子に近いほど悪性度が高くなります。
莢膜細胞腫やライディッヒ細胞腫は良性です。
それに対して顆粒膜細胞腫やセルトリ細胞腫といった卵子や精子に接する細部由来の腫瘍は境界悪性腫瘍以上と悪性度が高くなります。
胚細胞性腫瘍
これは卵子の腫瘍です。
ちなみに卵子も受精したら胎芽となり胎児と成長していきます。
一般的に発生学的に分化度が低いほど悪性度が高くなります。
受精卵に一致するのが未分化胚細胞腫です。
まだまだ発生学的にも未分化なため悪性度が高くなります。
徐々に発生がすすむと悪性度が低くなっていきます。
成熟嚢胞性奇形腫では髪の毛や歯などができるくらい分化が進んでいることになります。
そのため良性腫瘍に分類されます。
ちなみに未熟嚢胞性奇形腫は神経成分に未熟な要素があるものです。
ヒトの神経は脳を作るくらいとても成長力が強い細胞でもあるため、未熟な神経成分を含む場合は無秩序な成長といった浸潤などの性質が加わるため注意が必要となるのです。
*イラストでは受精卵の腫瘍のように未分化胚細胞腫を描きましたが実際は受精卵の腫瘍ではないです。あくまで発生と関連付けて覚えられるようにしているだけです。
以上が卵巣腫瘍の種類についての基本的な知識となります。次回は卵巣腫瘍の治療法について説明していきます。